こんにちは。
ファッションアナリストの七理悠介です。
ミリタリーアイテムって、おしゃれな人がよく取り入れるスタイルの1つですよね。
軍隊で着用されてきた歴史の中で、機能性を重視した末に行き着いた「機能美」が魅力です。
男らしい「ラギッド感(無骨な感じ)」がコーディネートを引き立ててくれるため、男性に人気のアイテムでもあります。
ミリタリージャケットとして特に人気のアイテムが「アメリカ軍」の傑作である「M-65」です。
色々なファッションブランドがM-65をモチーフにしたアイテムをこれまでリリースしてきました。
私も最近、とても素敵なミリタリーアイテムを購入したのでご紹介します。
目次
AUBERGE × Brilla per il gusto / 別注 CHASER M-65 ミリタリージャケット
私が今シーズン購入して愛用しているアイテムが、人気急上昇中のブランド「AUBERGE(オーベルジュ)」の「CHASER」です。
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アメリカ軍の名作ミリタリージャケットである「M-65」を踏襲したデザインのアイテムになります。
セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」のオリジナルレーベルである「Brilla per il gusto(ブリッラペルイルグスト)」とAUBERGEがコラボした別注アイテムとして制作されました。
BEAMSとAUBERGEがコラボするのは毎年定番になってきましたね。
個人的には「M-65モデル」のアイテムは、近々きっとAUBERGEで作られるだろうなと感じていました。
というのも、AUBERGEは既に発表されている「M-47」モデルのカーゴパンツをはじめ、名作で有名なミリタリーアイテムを踏襲した物が非常に人気があるためです。
そしてAUBERGEでは名作ミリタリーベースのアイテムは、毎回そのシーズンでの「目玉アイテム」となることから、だいたいワンシーズンにつき「数点まで」であることがほとんどになります。(これについては、だいたいどのブランドでも同様ですね。目玉アイテムがあまりにもたくさんあると、特に注力したい商材がバラけてしまうためです)
そうした経緯から、昨シーズンの時点で「おそらく来シーズンは”フランス軍”ではなく、今度は”アメリカ軍”のアイテムでくるだろうから、もしかするとM-65が制作されるかも」と密かに想像していました。
現場の兵士から長年支持されたM-65
CHASERが制作されることになったのは、AUBERGEのデザイナーである小林さんが「寒い日が続いたため、沸々と”M-65をもう一回着てみたいな”という気分になった」ことが理由としてあります。
ちなみに、小林さんは若い頃からM-65を着用されていたため、ご自身の中では「第3次M-65マイブーム」だそうですね。
小林さんはM-65の「ファーストモデル・セカンドモデル・サードモデル」を所有されており、それぞれを着比べてみると、「ファーストモデル」が今の気分にしっくりときたとのことです。
M-65の「4パッチポケットのフィールドジャケット」という仕様は、元を正せば第2次大戦中に作られた「M-43」が最初の形となっています。
M-43は襟の形が「開襟」になっており、M-65のような「アクションプリーツが無い」のが特徴で、それ以外は、ほぼM-65と同じ形です。
この形がM-43が作られた年である「1943年」には既に原型は出来上がっています。
その後、映画監督・俳優である「ウディ・アレン」が着用していたことで有名な「M-51」が作られました。
M-51は、襟がそのまま「シャツ襟」みたいな形の「小さい襟」がついているのが特徴です。
シャツ襟の特徴以外は、M-65とほぼ変わりません。
こうした歴史を経て作られたM-65は、襟型は「スタンドカラーの高さがある」仕様で、さらに襟の中に「フード」が収納されており、フードが裏地内でそのまま下の方にストンと落ちています。
M-65は「2000年過ぎ」まで作られ続けました。
長年生産され続けたのには、現場の兵士から「使いやすい」という希望で継続された経緯があります。
高機能素材が台頭してきた時代に、1943年からの設計が「60〜70年間使われ続けた」魅力があるのが、M-65の人気を支えているのかもしれませんね。
映画スターが着用していたような「ゆとりのあるシルエット」をイメージ
M-65を着ていた代表的なスター・カッコいい象徴的な映画といえば、以下の3本が3大映画として挙げられるのではないでしょうか。
1973年公開の「セルピコ」で「アル・パチーノ」がセカンドモデルを着用。
1976年公開された「タクシードライバー」では「ロバート・デ・ニーロ」がセカンドモデルを着用。
そのタクシードライバーにフランス人が触発されたであろう1978年のフランス映画「チェイサー」で「アラン・ドロン」がセカンドモデルを着用。
彼ら映画スターに加えて、M-65を着用した有名人を小林さんはもう1人挙げられています。
フランスの俳優・歌手である「イヴ・モンタン」が1980年にリリースした生前最後のスタジオアルバム「D'AUJOURD'HUI(邦題:昨日、今日・・・)」のアルバムジャケットでは、フランス人らしく「民生品」の「ベージュ色」のM-65を着ているのが印象的です。
「軍用品」としてのイメージが強い「オリーブ」にいかないのところが流石イヴ・モンタン。
彼の着こなしに小林さんがインスパイアされたため、CHASERは「オリーブ」とイヴ・モンタン的「ベージュ」の2色展開です。
その上で、イヴ・モンタンやアラン・ドロンが着用していたような「ゆとりのあるシルエット」をイメージして制作されています。
アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、アラン・ドロンなどの時代を振り返ると、エディ・スリマン時代に「タイトなM-65」がありました。
こうしたタイトなM-65に対して、「それならわざわざM-65じゃなくていいじゃん」と考えられていたため、小林さん的にはM-65を所有して以来30年越しに、ゆとりのあるシルエットが今の気分に合っているそうです。
M-65ファーストモデルの特徴を忠実に再現したデザイン
CHASERはM-65ファーストモデルをデザインベースとしており、その特徴を基本的には忠実に再現しています。
なぜ今、M-65のファーストが小林さんの気分的にしっくりきたのか。
これについて小林さん的には「M-65ファーストの秘密」と呼ばれている特徴が影響しています。
M-65ファーストとセカンドの違いとして有名なのは、肩の部分の「エポーレットの有無」ですけれども、実はそれだけではありません。
ファーストは「背中のステッチ」が「内側1本」のみ。
それに対してセカンドはステッチが「2本」入っています。
また、M-65の裏地は「フラシ」といって見える仕様です。
その中の裏地を見ると、ファーストは「断ち切り」でステッチが2本見えますが、外側の1本は「地縫い」といって2枚の生地を1つに縫い合わせるためのステッチになります。
内側の1本は、表から見た「飾りステッチ」の下糸です。
つまり「2回縫っている」のがファーストの仕様で、セカンドは「チェーンステッチ(巻き縫い)」になっています。
1回も表を「巻き縫い」で縫っている箇所が無いにも関わらず、裏地だけはダブルステッチで巻き縫いをしているのが不思議ですよね。
この事は服を作る上では大きな差で、M-43からM-65の歴史、つまり1943年から2000年までほぼ「60年間」において、後ろが「断ち切り」でステッチを「2回」かけたのは「1965年〜1966年の1年間」だけの作りです。
M-65ファーストは、「一体どのくらいの数の工場で作っていたのか」について、小林さん的には確証があるわけではないみたいですが、調べた限りだとM-65のファーストでは「MA-1」のような「生産工場を表すタグの記載」があるものは1着もないそうです。
そこで、「リーバイス501のボタン裏の数字番号のようなものがあるはず」と小林さんは推察されました。
M-65ファーストには、「COAT MAN'S FIELD WITH HOOD NYLON COTTON SATEEN OG-107 DSA 100-1928」といったようなタグ記載があります。
ここでの「DSA」は「Defense Supply Agency(ディフェンス サプライ エージェンシー)」であり国防補給局のことです。
その後の数字は、年号が入って4桁の数字が入りますが、「最後の4桁の数字が工場番号ではないか」と推察されました。
しかし、日本のサイトでは明確な答えが見つからなかったそうです。
ちなみに、ファーストの最後の数字4桁は「817」「1690」「1691」「1928」「2365」これくらいがあることが分かっています。
この5種類の数字が割り振られたものは、どれも「仕様が同じ」です。
要するに、スペック的に国が「エポーレット無し」「裏地が断ち切り」等の仕様を指示していたことが分かります。
そして、ファーストは着てみると、生地感が「グニャグニャ」です。
通常であれば、巻き縫いでガチンと縫っていると、縫い代がたまることもあり、縫っている箇所が張ってしまいます。
ところがファーストの裏地は「断ち切り」で「表側もステッチ1本でおさえているだけ」なので、縫っている箇所がグニャグニャです。
それが理由で、着てみるとフワッと生地が落ちて丸っこい見た目になります。
元々M-65というのは「アクションプリーツ」が入っていることもあり、「上腕ガッシリ感」というのが歴代フィールドジャケットの歴史の中で「腕が逞しく見える」のが特徴です。
このガッシリ感がカッコいい部分でもありますが、それが強すぎると感じる場合もあります。
小林さん的には「もうちょっとナイーブに着てみたい」ということで、「エポーレットも要らない、落ち感もあって柔らかく緩く着たい」というのが今の気分だったようです。
そうした仕様もあり、ファーストは「肩が落ちるの」が特徴で、「ナチュラル感」があり、「柔らかく着用できる」仕様となっています。
小林さんが収集されているM-65は「レギュラー丈のスモールサイズ」です。
これがCHASERのデザインベースとなっており、ファーストの「柔らかく仕上がる部分」を全部踏襲して、大きな修正は行なっていません。
ウエスト部分の「ドローコード」も再現されています。
ただし、オリジナルのM-65に比べてCHASERの場合は「襟の部分を少し高くしている」のに加えて、「袖の太さを調整」をしていることでモダンな印象になっていますね。
個人的に気になったのは、「袖口」の仕様です。
CHASERの袖口は「ボタン」になっているんですけれども、私の記憶では袖口にボタンが使用されていたのは「M-51」までで、M-65からは「ベルクロ」が採用されていたはずです。
もしかすると、ファーストの最初期モデルではボタンタイプもあったのでしょうか。(ミリタリーに詳しいご存知の方がいらっしゃれば是非教えてください)
その他のディテールは、M-65ファーストらしく「アルミ製スライダーのジップ」「綿素材テープ」が採用されているのもしっかりと再現。
かなり細部にまで気を配られたアイテムになっています。
すなわち、AUBERGEのCHASERは、古き良き時代のディテールを忠実に再現しつつも、「現代的アップデート」が行われた大人のミリタリーにふさわしい仕上げとなっていると言えますね。
古着市場ではM-65ファーストの価格が高騰しているため、同じくらいの価格を出すのであれば、温故知新を感じさせるAUBERGEのCHASERを候補として入れてみるのもおすすめです。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
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