こんにちは。
ファッションアナリストの七理悠介です。
大人のファッションに「ミリタリーパンツ」って相性が良いですよね。
男らしい「ラギッド感(無骨な感じ)」がコーディネートを引き立ててくれます。
さらに、軍隊で着用されてきた歴史の中で、機能性を重視したすえに行き着いた「機能美」が、他のアイテムにはない魅力です。
そんなミリタリーパンツの中でも、「ベイカーパンツ」は合わせやすいアイテムとして人気があります。
ベイカーパンツは、主に「作業着」として使われてきた背景があるので、戦場での戦闘服として使用されるような「カーゴパンツ」などと比較しても、デザイン・シルエット的に「日常使いしやすい」といったことがメリットですね。
最近ではリーズナブルなブランドでも、素敵なものが多く見られるようになりました。
例えば、「GU(ジーユー)」が3〜4年前に販売していたベイカーパンツも、よくできていて完成度に驚かされたアイテム。
私自身、リーズナブルなブランドから高級ブランドまで、昔からたくさんのベイカーパンツを履いてきており、ワードローブには欠かせない存在です。
そこで、私が特におすすめしたい、とても大人っぽくて素敵なベイカーパンツがあるのでご紹介します。
目次
AUBERGE × Brilla per il gusto / 別注 ベイカーパンツ
私が愛用しているのが、人気急上昇中のブランド「AUBERGE(オーベルジュ)」のベイカーパンツです。
⇒AUBERGE × Brilla per il gusto / 別注 ベイカーパンツの公式サイトはこちら
セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」のオリジナルレーベルである「Brilla per il gusto(ブリッラペルイルグスト)」とオーベルジュがコラボした別注アイテムになります。
「本物への追及」「大人が着れるミリタリー」をコラボテーマに、ハイエンドなアイテムとして制作されました。
オーベルジュのインライン(通常品)とは異なり、タグに「Brilla per il gusto」のネームが入った特別なデザインです。
ブランド開始当初は本当に「知る人ぞ知るブランド」状態で、ごく一部の洋服好きにのみ存在を知られていたオーベルジュなんですけれども、ビームスとコラボしてから知名度が高くなった気がします。
現状、オーベルジュの取り扱い店が少なく、そのことをオーベルジュのデザイナーである「小林 学」さんも困っていらっしゃる状況です。
やはり、ブランドが大きくなって、デザイナーがやりたいことをさらに増やすためには、多くの方に存在を知っていただき、知名度向上による「受注数増加」が必須になります。
そういった意味で、大手セレクトショップであるビームスのクリエイティブディレクターを務められている「中村達也」さんが取り上げられたのは意義があり、知名度獲得に大きく貢献したのは間違いありません。
以前は、オーベルジュのアイテムを試着してみようと考えても、オーベルジュ直営店か、各地方に点在する取扱店にまで出向くしかなく、住んでいる場所が離れている方にとっては、なかなか実現が叶いませんでした。
それが、ビームスであれば全国に幅広くショップが存在していますし、多くの方にとって、オーベルジュのアイテムを直接触れることのできる機会を生み出しています。
とはいうものの、ビームスで取り扱いのあるオーベルジュのアイテムもごく一部でしかありません。(ビームスはあくまで”セレクトショップ”なので、当然のことですが)
去年もでしたが、今年の動向を見ていても、新作のリリース時にビームスに入荷されるアイテムの種類はとても少なかったですね。
だからこそ、多くの方にオーベルジュの取り扱い店へ足を運び、毎年新たなテーマで作り上げられた傑作揃いのアイテムを試着してもらいたいですし、もっと多くの取扱店が増えることを願っています。
U.S. ARMYのベイカーパンツがデザインのベース
オーベルジュのベイカーパンツは「U.S. ARMY(USアーミー:アメリカ陸軍)」がデザインのベースとなっています。
数ある軍隊の中でも、USアーミーのミリタリーアイテムはとても人気で、おそらく最も有名なのではないでしょうか。
私も学生時代からずっと大好きなのがUSアーミーのアイテムで、古着屋さんなどを巡っては購入して愛用し続けています。
世界中の軍隊で採用されている戦闘服も、USアーミーがデザイン元となっているケースが多いですね。
それだけUSアーミーの存在は大きく、「デザインとして完成度が高い」ということが言えると思います。
さすが「合理主義の国」であるアメリカが生んだ「機能美」、ということでしょうか。
このため、数多くのブランドのミリタリーアイテムのデザイン元となっていますね。
オーベルジュのベイカーパンツも基本的にはUSアーミーを踏襲したデザインです。
いわゆるベイカーパンツのディテールである、フロント部分に「ベイカーポケット」と呼ばれる「L字型のパッチポケット」があるのが特徴。
ウエスト部分には「アジャスターのボタン」が付属。
オリジナルのUSアーミーでは、年代などの種類によってはアジャスターボタンがついていないものもありますね。
もしかしたら、昔のモデルにだけ付属しているのかもしれません。(デザイナーの小林さんはヴィンテージ好きなので、古いモデルを参考にするでしょうし)
フロント部分の開閉は、「ボタンフライ」を採用。
これも、ジップフライがない時代のヴィンテージ感を再現しているのではないでしょうか。
シルエットはUSアーミーオリジナルとは異なり、現代的な印象
基本的なベースは「USアーミーのベイカーパンツ」ですが、シルエットは全く異なり、改めて設計されています。
オリジナルのベイカーパンツといえば、「股上がとても深い」のが特徴です。
対してオーベルジュのベイカーパンツは、「股上を浅く」しており、さらに「程よいテーパードシルエット」になっています。
ただ、スッキリとした腰回りのラインは、USアーミーのベイカーパンツと一緒です。
生地はオーベルジュ独自の「究極のベンタイル生地」
オーベルジュのベイカーパンツに使われている「生地」は、オリジナルとは異なって、ブランドが独自で開発したものです。
生地の制作は、世界的にも評価の高い「ダイワインターテック」が担当。(ハイブランドにも生地を供給しています)
国内屈指の高密度織物工場にて、特殊な製法で作られています。
素材は「コットン100%」なんですけれども、「生地のツヤ感」「触り心地」がすごくて、本当にコットンのみだとは信じられません。
だから初めて試着した時は、「なにか他の素材とのハイブリッド生地なのかな」としか思えませんでした。
それに、あまりにも「生地が軽い」ことも、驚きのポイントとして挙げられます。
この独特の生地感は、「限界まで高密度に生地を打ち込んでいる」ことが理由です。
元々、「ロイヤルエアフォース(英国空軍)」が1940年代に開発した「ベンタイル」という、繊細で超極細の綿糸を高密度で打ち込んだ生地があります。
ところがオーベルジュの生地は、そのベンタイルよりも、さらに高密度に打ち込まれたものです。
織り糸をあえて「英国海軍規格の半分の太さ」にしています。
つまり、軍のスペックを遥かに凌ぐ、「究極のベンタイル」と呼べるものではないでしょうか。
ここまでくると、もはや「男のロマン」といえるようなアイテムですね。
それは単なる「オーバースペック」と片付けられるだけのものではなく、「見た目の上品さ」と「極上の着心地」をもたらしてくれているのが魅力です。
さらに、とても高密度に打ち込んでいるため、「撥水性」にも優れているというメリットがあります。
実際、私は去年の春夏にヘビロテしていたんですが、急な雨に降られた時にも、生地が雨をはじいていたので感動してしまいました。
色味は「アメリカ」ではなく、「ヨーロッパ」を意識したダークトーン
オーベルジュのベイカーパンツは、USアーミーのオリジナルとは色味が異なります。
アメリカのオリジナルよりも、ヨーロッパの軍モノに見られる「ダークトーンのオリーブグリーン」です。
つまり、「形はアメリカなんだけど、色味はヨーロッパ」というハイブリッドアイテムになります。
このアイテムに限らず、オーベルジュが手掛けるアメリカのアイテムは、「アメリカ好きのフランス人が作ったアイテム」「フランス人が考えるアメカジ」といったテーマが設定されていることが多いですね。
それは、小林さんがファッションの勉強をしにフランスに行かれた経験が、やはり大きく影響しているのではないでしょうか。
モダンなシルエットと洗練された色味で、大人っぽい着こなしができるベイカーパンツ
オーベルジュらしい表現がされた大人な雰囲気のベイカーパンツのため、色々なコーディネートで活躍します。
カジュアルにカットソー1枚で合わせても素敵です。
洗練されたダークトーンのオリーブグリーンが、ラフすぎない印象にまとめてくれます。
モダンなシルエットにアップデートされたアイテムなので、ジャケットと合わせてもバッチリです。
特に、「ブレザー」との合わせは、おしゃれな方たちもよくする鉄板のコーディネートですね。
個人的にも大好きな着こなしで、ミリタリーパンツには頻繁にブレザーと合わせています。
ベイカーパンツらしい「小さめなヒップ」に加えて、キレイなテーパードシルエットが、スマートな印象を与えてくれるのではないでしょうか。
したがって、幅広いコーディネートで活躍する「汎用性の高いボトムス」となっているのが、オーベルジュのベイカーパンツの魅力です。
ヴィンテージ好き・洋服好きも納得の「本物の素材」「ディテールへのこだわり」が、存分に堪能できる素晴らしいアイテムだと感じます。
小林さんがオーベルジュのアイテム制作において、狙いの1つとしてよく挙げられている「経年変化」についても、長年履き続けていくことによって、どのようになるのか楽しみです。
ぜひ参考にしてみてくださいね!