ファッション分析・考察

おしゃれなファッションに必要なのは論理なのか?センスなのか?理論さえ分かれば感性は本当に必要ない?

2020年1月30日

こんにちは。

ファッションアナリストの七理悠介です。

 

今回は、このブログを始めた当初からずっと取り上げたかったテーマをご紹介します。

それは「おしゃれなファッションに必要なのは、ロジック(論理)なのか?センス(感性)なのか?」についてです。

 

昨今、数多くのファッション指南者の影響からか、「ファッションで大切なのはセンスではなく論理」「ファッションのロジックさえ理解していればセンスなんて必要ない」といった主張が広まっています。

その発言の理由付けとしては、「センスなんて曖昧なものではファッションはおしゃれになりにくい」です。

 

そう言いたくなる気持ちは理解できます。

しかし、「自分はおしゃれの論理を理解している」と主張しているはずの方であっても、実際のコーディネート・着こなしを見てみたら「論理的にはコレがおしゃれだと言っているけど、あまりおしゃれには見えないな」と感じてしまうことってありますよね。

また、論理的には「NGファッション」として最近は挙げられることの多い「全身カジュアルファッション」だとしても、非常におしゃれに感じる方が存在するのも事実です。(全身どカジュアルであっても、滅茶苦茶おしゃれなファッション業界の方が私の身近にもいます)

 

本当に論理が大切でセンスなんて必要ないのであれば、これらのことはどう捉えれば良いのでしょう?

 

人は「感性」と「悟性」によって物事・事象を認識する

そもそも、「おしゃれなファッションとは?」について言及するのであれば、「服を着た人の印象を、他人はどうやって感じ取っているのか?」「ファッションを人が認識する仕組み」について考えてみる必要があります。

 

ファッションや、それを着た人間も物事・事象の一部です。

そうなると気にすべきは、「人はどうやって物事・事象を捉えるのか?」ということ。

つまり、「人の認識の仕組み」「人が物事・事象を捉える基準(人間共通の”ものさし”)」は何なのか?ということですね。

 

これについては、2つの重要な要素が関係してきます。

それは、「感性」「悟性」です。

 

人間は「感性(物事を知覚する能力)」「悟性(論理的に思考する能力)」の2つの能力を持っています。

感性は聞いたことのある言葉ですけれども、悟性は聞き馴染みがないかもしれません。

 

「物の大きさを見比べることができる」というのは、この「悟性」の働きによるものです。

悟性が働いているから共通認識が生まれ、皆が「同じ”ものさし”」を使って「AとBのどちらが大きいか」を見比べることができるんですよね。

だからこそ、人は同じ物を見た時に「AよりもBのほうが大きいよね」と共通認識に基づく会話を成立させることができます。

「物事・事象についての理由を考えることができる」のは、この”ものさし”のおかげです。

 

「美意識」は人間の共通認識ではない

「物の大きさ」等は、悟性による”ものさし”によって誰もが共通認識できるようになりました。

しかし、人には共通の”ものさし”があるのに、認識がバラバラなものが存在しています。

その最たる例が「美意識」です。

 

例えば、同じ景色や絵画を見た時に「これは美しい」と感じる人もいれば、「こんなの美しいとは思わない」と答える人もいるでしょう。

「美しいか、美しくないか」なんて意見は、あくまで「その人の感性」でしかありません。

 

こうした「美意識」に関する人間の感覚はとても奥深く、哲学者の「カント」が30年あまりをかけて研究しました。

その結果、カントは「美的判断力とは、快・不快の感情で判定する能力のこと」としています。(非常に興味深いので、さらに深く理解されたい方はカントについての書籍をぜひご覧ください)

要は、美しいと感じることは「快を感じる」ということです。

ところが、その「快」は個人の「これまでの経験」によって変化します。

 

それにもかかわらず、「美も他の事と同じように捉えられると思い込み、周りの人と共有できると勘違いしてしまう」ことが人間には起こるので問題です。

これはよく考えてみると、「そもそも実現できないことを求めてしまう」ものなんですよね。

 

ファッションは感性と悟性が大事。センスだけでもロジックだけでも素敵には見せにくい

「論理的には説明ができないもの」は人間の持つ他の感覚においても同様で、「これがおしゃれだ!」「滅茶苦茶かっこいい!」と誰かが言っていたとしても、ある人から見れば「これのどこがおしゃれなの?」「全然カッコよくないな」と感じられます。

例えば、「ジャケットスタイルは好みじゃないし、自分はラフなアメカジが好きだな」と感じている人に、「アメカジよりも、大人っぽく見えるジャケットスタイルが良いんだよ!」なんて言っても理解されるわけがありませんよね。

「”アメカジが好き”、”ストリートスタイルが好き”、”民族衣装が好き”」これらは悟性によるものではなく、「それがその人の持つ感性」だからです。

 

確かに、感性(センス)だけに頼ってしまうと「独りよがりなファッション」になりがちなことも事実。

かといって、悟性(ロジック)にだけ頼るのも考えものなんですよね。

「他者への理解」というものを全く考慮しないと、人に快を与えることはできません。

 

というのも、同じ価値観を持った人は、同じ快(美的感覚)を持ちやすいものだからです。

そういった意味で、「おしゃれに見せたい相手」がいるのならば、その人の感性を理解する努力が必要になります。

 

感性(センス)は人によって異なるのは事実ですが、そのことだけで「じゃあファッションセンスなんて、今更どうしようもないじゃん」と、なげやりになる必要はありません。

センスは「人から教わる」のはなかなか難しくても、「自分で感性を育て、センスを磨く」ことはできますから。

試行錯誤しながら、経験を重ねることでセンスは構築されていくものですし。

 

だからこそ、良い印象を与えたい人に対して「感性と悟性」を発揮して、相手に合わせることができるのが重要だと私は感じます。

「センスとロジック、どちらが良い?」ではなく、「センスとロジック、どちらも大事」ということです。

 

「ファッションにセンスなんて要らない」はファッション指南者のポジショントーク

「ファッションにセンスなんて必要ない」なんていうのは、「センス(感性)の重要性を理解していない」か、もしくは「意図的にセンスの重要性を隠している」方の発言だと思います。

というのも、この「センス」は人に伝えるのが当然難しいわけですから、ファッション指南をされている方としては「センスなんて無くても、自分の言った通りにすれば大丈夫」といった立場を貫きたいわけですよね。

そう考えてみると、ファッション指南者の方がそうしたポジショントークをしたいのも、なんだか理解できなくはない気がします。

 

ですが論理(ロジック)がいかに完璧に見えても、「論理さえあればセンスなんて要らない」なんていうのは幻想です。

同様に、「おしゃれの論理は分かったから、これでもう自分はファッションをマスターした」と考えてしまうのも幻想でしかありません。

 

それに、おしゃれ(美意識)は「環境」など様々な要因によって変化します。

やはり、「普遍的で完璧な論理なんて存在しない」ということですね。

洗練された大人は、このことを忘れないようにしなければいけません。

 

とはいえ、もちろん論理を否定するわけではなく、「多くの方から見て、おしゃれに受け取られやすいファッション」というのも存在します。

ファッションが苦手な方にとって、「こうすればおしゃれに見えやすいよ」という論理が必要な場合もあるとも感じるため、ファッション指南者の必要性はあるというのが私の考えです。

 

重要なのは「どんな意見も”参考”にする」ということ。

私が心の底から伝えたいのは、「着こなしにセオリー(理論)はあっても、絶対のルールなんて存在しない」ということです。

誰かが言いだしたことを「参考にする」のは良いことですが、「妄信する」ものではありませんよね。

ファッション指南本は「信じる」ではなく「参考にする」もの!先入観を持たずファッションを楽しもう!

世の中には、ファッションについて発信されている方が数多くいらっしゃいます。

その一人ひとりが参考になるものですけれども、「誰か一人の意見にのみ耳を傾ける」のは危険です。

論理的でありたいはずなのに、それでは理屈抜きの宗教になってしまいます。

論理性を求める方にとって、むしろ逆の結果になっていると言えるかもしれませんね。

 

このことを防ぐためにも、インプットした情報の「検証と補完」が必須です。

 

多様性のある中で、自分に合ったファッションを”自分で”判断する

ファッションについては、たくさんの感覚や意見が存在します。

それらがバラバラであっても何も悪いことではありません。

人は皆違うからこそ、多様性が生まれます。

そして、多様性があるから「人」や「社会」は素晴らしいものです。

 

多様性がある中で、「どれが自分に合うか」は誰にも決められません。

唯一、自分自身を除いては。

「自分に合うものを取捨選択する」ことが大切なのだと私は信じています。

 

それゆえ、ファッションについて発信されている方がいたら、「その人のセンス・感性が、自分と合うかどうか」と、照らし合わせてみるのが大事なのではないでしょうか。

たくさんいるファッション指南者の”どの意見”を選ぶのか?ある意味、これもセンスの1つです。

だからこそ、ファッションは「人が言っているから盲目的に信じて決める」のではなく、「自分で判断する」のが重要だと感じます。

 

センスとロジック、どちらも活用してファッションを楽しもう!

ファッションは感性と悟性が大事なので、ロジックだけに頼りセンスを不必要とすると、自分が思い描いた結果にはなりにくいです。

自分のセンスを育て、磨き、周囲を推し量って他人に感性を合わせることも、社会的な生き物である人間には大切なのだと思います。

 

それに、ファッションで重要な「清潔感」だって同じことです。

形を変えるものだからこそ、「TPOに合わせて異なる」ということを理解しておかなくてはいけません。

洗練された大人は、センスとロジックの両方を大事にし、それらを活用してファッションを楽しみましょう!

 

ぜひ参考にしてみてくださいね!

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