こんにちは。
ファッションアナリストの七理悠介です。
寒くなってくると冬物のアウターで「ダウンジャケット」が欲しくなってきますよね。
PYRENEX(ピレネックス)・DUVETICA(デュベティカ)・TATRAS(タトラス)・CANADA GOOSE(カナダグース)等の高価格帯ダウンジャケットがセレクトショップには数多く置いてあり、それぞれが人気アイテムです。
私も以前は海外製の高価格帯ダウンを所有していましたが、インナーを秋冬のファッションにしていると非常に暑く、物によってはTシャツ一枚でも十分だと思いましたし、日本の冬にはオーバースペックに感じて手放してしまいました。(もちろん雪国に住まれている方の中には必要なのかもしれませんが)
特にその中でも一部のモデルについては、防寒性は素晴らしいんですけれども、シルエットもかなり大きく、適正なサイズのものを着ても、よほど体型が良い方でないと「着せられている感」が出てしまうと思います。
しかしリーズナブルなダウンジャケットには、特有の「チープ感」が子供っぽく見えて、なかなか素敵には見せづらいアイテムが多いことも事実です。
タウンユースを考えた場合の「見た目」と「機能性」を両立させたダウンは、これまで選択肢が少なく探すのが大変でした。
近年、高価格帯まではいかない「ある程度価格がこなれた」クラスのダウンのクオリティが急激に上がってきています。
まず候補は知名度も得た西川ダウンだが
比較的リーズナブルながらクオリティの高いダウンの1つは、以前ご紹介したナノ・ユニバースが販売している「西川ダウン」です。
ただ、西川ダウンはこれまで改良を重ねてきましたが、去年と今年のモデルには使用しているダウンの産地くらいしか変更点はなく、現時点で大幅なアップデートはもう終わったように感じます。
そのため、新規で検討する方にはいいのでしょうが、これまで所有してきた方にとっては物足りないものでもあるのではないでしょうか。
こういったある種の完成形を迎えたアイテムは買い替え需要を呼びにくく、アパレル会社にとって売上と完成度のジレンマを生みます。
余談ですが、PCなどの家電がわざとアップデートの内容を売上と天秤にかけながら調整しているのと同じく、アパレルもどの程度刷新するかを考えながらアイテムをリリースする場合もあります。
それは完成度だけではなく、例えば色展開で行うことも。
経験ありませんか?「去年はこの定番色があったのに今年は無い!何で今年は出さないのだろう?」と思ったことが。
全てが同じ事情ではないでしょうが、これも戦略の1つです。(ただ、一部を除いてアパレル業界は非常に厳しい環境ですので、なりふり構わずにはいられないのでしょうが)
もちろん、どの会社もボランティアではなく営利企業ですので、そういった戦略を取るのは何も悪いことではありません。
なので我々顧客側は、そのことを理解してうまく付き合っていく必要があります。
だからこそ、毎年新たなアイテムとの出会いが、文字通り「一期一会」だという感覚でショップを巡ると、より一層楽しめるはずです。
西川ダウンは実直にユーザビリティを考えて、それに応え続けたからこそ、大幅なアップデートがなかったのかもしれませんね。
対抗馬として挙がるのは小松ダウン
完成度が高い西川ダウンに対抗できる候補として現状のリリース品で考えられるのは、大手アパレル会社「ユナイテッドアローズ」が運営するセレクトショップの「BEAUTY & YOUTH(ビューティーアンドユース)」が販売している「小松ダウン」です。
小松ダウンとは、石川県にあるファブリックメーカーの「小松マテーレ(元々は小松精練という社名でしたが今年の10月に社名変更しました)」がビューティ&ユースに提供した生地で作られたダウンのことで、最近人気が高くなっているアイテムです。
それを象徴するかのように、小松マテーレの業績成長は大きな右肩上がりで、今後の展開がとても気になるメーカーの1つですね。
去年も小松ダウンは販売されたのですが、あっという間に完売してしまい手にとることができなかった方も多かったのではないでしょうか?
今年も基本的な部分は変えず、更にアップデートを行なって販売されました。
いくつかのモデルがあるのですが、どれも非常にクオリティが高くおすすめです。
BY ”小松マテーレ” TW ダウンジャケット
複数あるモデルの中で特におすすめなのが、「BY ”小松マテーレ” TW ダウンジャケット」です。
※2021年版はこちら
これは良い意味での「ダウンらしからぬダウン」ですね。
西川ダウンとは明らかにアプローチの仕方が異なる作りになっており、個人的にはこちらもおすすめです。
表生地がナイロンではないですし、シルエットもよく考えられているので、普通のイメージのダウン感をあまり感じさせません。
アームホールなども「ピチピチのタイト」とまではいかないくらいの、「細すぎず太すぎず」の見事なバランスで、とても大人っぽく着ることができます。
とにかくダウン量を少なくすることでスマートな見た目にするブランドも多い中、小松ダウンは「きちんとダウン量を確保した上でメリハリをつけたシルエット」を構築しています。
この点は価格帯の近いダウンには、なかなか見られないものです。
私個人としては、ダウン量を減らして見た目を担保するくらいであれば、そこまでしてダウンを着る必要はないのではと考えています。
ダウンを着るというシチュエーションは、当然ながら「ダウンが必要な場面」なので、最低限の性能は必要なため、ペラペラのダウンは出番がほとんどないのではないでしょうか?
ただし、これは「アウターダウン」に限っての話で、「インナーダウン」には需要があると思います。
ジャケットなどのアウターの中に挟んであげることで、TPOに合わせて調整できるので、そういったダウンは「インナー用途でのレイヤード前提」で考えたほうが良いかもしれません。
表生地にナイロンを使用した、いわゆる普通のダウンジャケットも「BY ”小松マテーレ” ナイロン ダウンジャケット」という名称でラインナップにあります。
※2021年版はこちら
こちらのモデルも出来が良いですね。新色の「ダークグリーン」は、カーキがかったとても良い色味で素敵です。
若々しく見えるのは、こちらのナイロンのほうだと思うため、ダウンジャケットの好みによってはこちらもおすすめできます。
「若々しさ」か「大人っぽさ」か、どう見せたいのか自分のキャラクターと相談しながら決めると良いでしょう。
ナイロンよりも、合わせる服を選ばない点や、大人っぽさで言えばTW ダウンジャケットのほうがよりおすすめです。
ちなみに、「TW」は「テトロン・ウール」の略で生地の種類を表しています。
TW ダウンジャケットの色展開は「ネイビー・グレー・チェック」の3種類があります。
全国的には「ネイビー」が1番人気みたいですが、個人的には「グレー」がおすすめです。
とても大人っぽい色味ですよね?特に気に入った色なので、私はこちらを購入しました。
一部の店舗では、グレーのほうが売れ行きが良いらしいです。
チェックも普通であれば敬遠する方が多いと思うんですけれども、トレンドを反映した「グレンチェック」を採用しており、落ち着いた雰囲気で素敵です。
よく見ないと柄が入っているとは分からないくらいなので、こちらのチェック柄も候補の1つとして入れて良いと思います。
小松ダウンがダウン感を感じさせないのは、他にも理由があります。
通常、ダウンジャケットは生地に「キルト」があるものが多く、これが見た目に大きな影響を与えますが、TW ダウンジャケットは「キルトがない作り」のため、洗練された印象を受けますね。
襟周りに関しても、「立ち襟」なので、何も考えずにそのまま羽織るだけでサマになります。
ポケットの数の多さや、その使いやすさなどは昨年同様で、ショップの方の言うように「手ぶらでも困らない」という工夫が理解できる内容です。
ショップ公式の写真や、説明にない特徴としては、「フロント左右のポケットの内部にコードがついている」ということが挙げられます。
公式サイトには写真がなかったので、私の手持ちのものでご紹介します。
このコードを引っ張ることで、ウエストの絞りを変えられるんですね。
これにより、寒い時でもダウンのフロントを開けることなく、ウエスト部分から冷気が入ってこないように調節できます。
その他のディテールにもこだわりが詰まっており、昨年に比べて「利便性・快適性」がアップしています。
主なアップデートは2点です。
まず1つ目は、「襟内側・袖裏・裾裏にメッシュ素材を採用した」ことです。
冬場でも、動いていたり暖房のある所にいたりすると、汗をかきます。
その際に肌が直接ふれる箇所は、生地によってはベタついて快適性が失われてしまいますが、メッシュだと肌触りが良いままです。
小松ダウンが今年のモデルから取り入れてきたのは、着心地の面で嬉しいですね。
2つ目のアップデートは、「フードスピンドル穴の追加」です。
パーカーのフードなどに紐がついていて、引っ張ることでフィット感を変えられますよね?
あの紐を「スピンドルコード」と呼ぶのですが、縮めた後に元に戻すのに手間取ることがあります。
それを簡単に戻すことができるように、フード中央の内側にスピンドル穴をつけて、利便性を向上しています。
あまりパッとしないように感じますが、この機能は地味に便利です。
アウトドアブランドのダウンなどによく採用されている機能なので、見た目だけでなく利便性もよく考えられている本気の作りであることが分かります。
小松ダウンは価格帯に見合わないくらい満足度の高いアイテム
これだけのディテールの作り込みのものが、そこそこの値段で買えてしまうことに驚いてしまいます。
タウンユースを考えた場合、現時点でこれ以上ないくらい満足度の高いアイテムであることは間違いないです。
どんどん寒さが増してくる季節ですので、「見た目」と「機能性」のどちらも犠牲にしない優秀なアイテムをお探しの方にピッタリだと思います。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
2019年の小松ダウンについての記事はこちら。